「売れ残り」ではない鯨肉

6月13日、鯨肉に関する奇妙な報道を目にした。

鯨肉4分の3売れ残り

この内容は5月22日、反捕鯨を主張する団体に寄稿された文章を基にしたものであった。

 イルカ&クジラ・アクション・ネットワーク
 「鯨肉が売れない!」~鯨研自らが発表した、入札結果の惨状~

 http://ika-net.jp/ja/ikan-activities/whaling/250-sluggish-sales-of-whale-meat

報道では

分析結果をまとめたのはフリージャーナリストの佐久間淳子さんとクジラなどの保護活動に取り組む市民団体「イルカ&クジラ・アクション・ネットワーク」。

となっていた。これは日本鯨類研究所が公表している2011年(第18次)北西太平洋調査事業の調査副産物の入札販売の結果を基にしたものだ。

 財団法人日本鯨類研究所
 調査副産物を購入したい方へ(入札販売について)
 http://www.icrwhale.org/nyusatsu.html
 市場関係者向け入札結果
 http://www.icrwhale.org/nyusatsukekka.html
 一般入札結果
 http://www.icrwhale.org/nyusatsukekkaippan.html

報道では販売量と落札量から「4分の3が売れ残った」としているが、上のページでは応札重量も公表されている。販売量、落札重量、応札重量から下のグラフを作成した。

2011年JARPNII副産物入札販売結果

応札はミンククジラでは販売量を上回り、ニタリクジラもミンククジラも販売量の2分の1ほどあったことがわかる。売れ残っているのにも関わらず応札と落札に開きがあるのは

・特定の部位に入札が集中した
・応札価格が共同船舶が定める最低販売価格に満たなかった

事が挙げられる。

入札による販売は今回が初めてのことであり購入側にも周知されたものではなく、主要な消費地の一つである復興途上の東北地方に配慮されたものでもない。潜在的な需要はこの入札結果だけでは見出せない。そして、この「売れ残り」、グラフで「落札なし」の鯨肉は現在も従来の相対で販売が続けられているので無駄な物ではない。

今回の入札制度で鯨類研究所と共同船舶は、市場が求める鯨肉の部位と価格を知ることができたことだろう。これらを参考に副産物の有効な活用に努めて欲しい。

鯨肉離れは止められるか

12月19日、日本経済新聞が鯨肉を取上げた記事を掲載した。
インターネットでは会員のみの有料制で、現在では該当記事も確認できない。図書館で誌面を確認したところ、内容は「止まらぬ鯨肉離れ」「在庫量は10年前の3倍」といった見出しに、東京のスーパーの小売店、女性会社員、中卸業者の声と東北大の石井准教授の指摘を取上げたものだ。

ナガスクジラの摂餌

在庫量を増したことは、捕獲枠を増したことも関わってくる。水産庁が発信している下記のPDFファイルを確認してもらいたい。

 鯨類捕獲調査の現状について
 http://www.jfa.maff.go.jp/j/study/enyou/pdf/shiryo2_4.pdf

2000年の南極海での捕獲枠はミンククジラ440頭だが、2005年には935頭の枠において853頭を、加えてナガスクジラ10頭を捕獲している。これは2004年までの第Ⅰ期調査を元に必要最小限の標本数として算出されたものだ。さらに北西太平洋でのミンククジラの捕獲枠も前年の160頭から220頭となっている。

鯨肉の消費が伸びていないのは確かだ。しかし、それは鯨肉に限った話ではない。牛肉もこの10年で消費量が30パーセント、魚介類も20パーセント落ち込んでいる。このような状況下において、鯨肉がまだ一定の消費量を確保できていることに注目すべきだろう。副産物の販売は年間約60億円となっており、市場規模は小さいともいえない。在庫は無駄というような見方がされているようだが、それは正しくない。在庫は財である。昨年度はシーシェパードの妨害でミンククジラの捕獲頭数はわずか170頭となっている。この不測の事態に対し、在庫があってよかったようなものだ。

水産庁や日本鯨類研究所が「シーシェパードのことばかり取上げておかしい」という識者もいるが、上記のファイルの「(財)日本鯨類研究所の経営状況」のページを見てもらえばその理由は見出せる。経常費用が経常収益を上回っている。シーシェパードの妨害を防げれば警備対策など、この経常費用を大きく削ることができるからだ。それだけで黒字は見込める。

「赤字だから即刻中止しろ」という話もおかしなものだ。民間企業においても何年も連続で赤字を出している企業はある。例えばソニーなどは4年連続で数百億円規模の赤字を出しているが、倒産していない。不正により巨額の損失隠しを行ったオリンパスも事業を即刻中止すべきだろうか。警察や自衛隊が黒字を生み出すことなどできるのだろうか。公益に投じられる税金は無駄ではない。

税金の無駄と槍玉にあげられてしまう南極海の調査捕鯨だが、まずはシーシェパードを排除し、副産物の販売を拡大することだ。日鯨研はまだ個人の賛助会員数を増やすことができるだろう。現在の300人程度はあまりにも少なすぎる。生物を研究する人ならば、過去のサンプルの重要性を理解しているだろう。今、日本が南極海の調査捕鯨を中止すれば、1900年代から連続性を持った南極海における鯨類のサンプルデータを失う事になる。商業捕鯨を再開できるのは何世代も先の話かもしれないが、人類、鯨類双方の為にも調査捕鯨は継続する必要がある。捕鯨問題に詳しい識者方はこのようなことをお考えになられないのだろうか。

ミンククジラ冊 ミンククジラステーキ
ミンククジラの赤肉。低脂肪高蛋白で鉄分も多い。生食もできるが、軽く焼いても美味。
個人的にはこの半分のサイズ、一人前食べきりサイズで販売してもらいたい。

クジラオバケ
さらし鯨。クジラの尾の皮を薄くスライスしたもの。
甘酢が合い、見た目もきれいなので女性にも受け入れられそうに思う。

イワシミンク盛り合わせとしゃぶしゃぶ
ベーコン(脂肪と肉)、さえずり(舌)、ひゃくひろ(腸)
上の盛り合わせは高額に感じるが、居酒屋でツマミを頼むよりは安く上がる。
一枚一枚が薄いが、不思議な食感を楽しめる。

クジラ缶詰
クジラの焼肉缶詰。
私の住む地域ではコンビニでもクジラの缶詰が手に入る。
震災直後の宮城県でクジラの焼肉缶詰のダンボールを目にしたとき、
鯨肉はけっして不必要なものではないと実感した。


No Sea Shepherd - 監視船の随伴は正解

各紙が今期の南極海の調査捕鯨について報じている。農水省は水産庁の監視船を随伴させる方針だという。

これは正解だ。海上保安庁より適任であるといえる。水産庁も司法警察権を有している。銃器での武装は認められていないものの、密猟者からの反撃に対応できるだけのノウハウを持っている。

シーシェパードのハラスメントはこれ以上過激化できない。シーシェパードがこれに対抗するには船舶を増やすことだが、それだけの資金を有しているとは考えにくい。

国内の環境保護を標榜する団体も抑える必要がある。昨年度もグリーンピースジャパンは調査捕鯨に関連する船舶の出航を海外のメディアにリークしている。調査捕鯨に批判的な内容をメディアに報じさせるが、この情報化社会において10年前のようなミスリードは難しくなっている。

現場の関係者は様々な制約により困難に直面することと思う。シーシェパードのヒッピーどもとは違い、自らの姿を公にできない人々を私は支持する。

noseaevil
ja: 国際刑事警察機構はポール・ワトソンの犯罪に関する追加情報を要求する。
en: Interpol requests additional information about Paul Watson in relation to a crime.
fr: Interpol demande de l'information supplémentaire au sujet de Paul Watson par rapport à une infraction.
it: Interpol richiede informazioni supplementari su Paul Watson in relazione ad un crimine.
es: Interpol pide la información extensa sobre el crimen de Paul Watson.
da: Interpol anmoder om yderligere oplysninger om Paul Watson i forhold til en forbrydelse.
nl: Interpol vraagt ​​aanvullende informatie over Paul Watson in relatie tot een misdaad.
ar: .الانتربول يطلب معلومات إضافية حول بول واتسون فيما يتعلق جريمة 


国際捕鯨委員会(IWC)を評価

機能不全だと叫ばれる国際捕鯨委員会(IWC)だが、英領チャネル諸島のジャージー島で11~14日行われた第63回年次総会を私は高く評価する。

IWC の存在意義、ブラジル・アルゼンチンが提案する南大西洋サンクチュアリー案に疑問が呈され、シーシェパードに対する非難も表明された。経済的な理由で参加できない国々があることの問題もはっきりした。

これまでの映像の中継は、会場内で一部のNGOらがハラスメントやパフォーマンスを行うことを抑制するために日本が提案したものだ。それが行われなかった今回の会合はこれまでと比較してセキュリティがしっかりしていたことを意味する。会場の外で行われたシーシェパードのパフォーマンスも穏便に排除されている。


シーシェパードによるIWC総会会場前での抗議活動。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm15005542

日本の調査捕鯨はIWC科学委員会にも寄与している。11日から開始されたIWC-POWER(Pacific Ocean Whale and Ecosystem Research、太平洋鯨類生態系調査)もその一環だ。調査捕鯨の放棄や、IWCからの脱退、沿岸捕鯨の再開を論じる識者がいるが、無責任だと私は断じる。我々第三者は、直接鯨類に携わる人々の姿を見ていくべきだろう。

ナガスクジラの摂餌


シャチをめぐる論争

マスメディアは公共性が高いとはいえ、各々に顧客を持つ。発信される情報には意図があり、中立、公正であるとは限らない場合がある。アメリカで最も権威があるとされる科学誌のサイエンス誌、アメリカの科学会にもそのような性質があるようだ。

ウィリアム・ソウルゼンバーグの著書、捕食者なき世界(原題:WHERE THE WILD THINGS WERE)に興味深い内容があった。北太平洋における哺乳類の減少をシャチの捕食によるものであることを示した論文を、サイエンス誌は2度も拒否したというのだ。

犯人はシャチ?

アリューシャン列島のラッコを研究していたジェームズ・エステスがラッコの減少に気付き、その原因がシャチであることを示唆した。恒温動物であるシャチは大型のサメの10倍の代謝量を持ち、一日に160000~240000カロリー、体重の5%の量の肉を摂取するという。ラッコだけで換算すると一日に4・5匹ラッコを食うことになり、6年間で40000匹のラッコの消失は、わずか3.7頭のシャチが捕食する量と同等だという。このときエステスがサイエンスに送った仮説は1998年10月に掲載された。

後にエステスはアザラシやトドなどの鰭脚類の減少の原因を究明する調査委員となるが、鰭脚類の減少もシャチ以外では説明がつかず、エステスとアラン・スプリンガーは捕鯨モラトリアム以前に行われた大規模な捕鯨がシャチの食料を奪い、鰭脚類を捕食するようになった可能性を唱えた。

2002年、エステスとスプリンガーは他7人の共著者と正式な論文サイエンスに送ったが、掲載を拒否された。二度目も拒否された。サイエンスの対応を不服とした調査委員会のロバート・ペインはエステスらの論文を米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)に掲載させた。

 Sequential megafaunal collapse in the North Pacific Ocean: An ongoing legacy of industrial whaling?
 北太平洋における大型動物相の連鎖的崩壊:今も残る商業捕鯨の負の遺産か?

 http://www.pnas.org/content/100/21/12223.full.pdf

この仮説が発表されるや否や、エステスらには批判のメールが届き、後にはこれに対する論文が発表された。

 KILLER WHALES, WHALING, AND SEQUENTIAL MEGAFAUNAL COLLAPSE IN THE NORTH PACIFIC: A COMPARATIVE ANALYSIS OF THE DYNAMICS OF MARINE MAMMALS IN ALASKA AND BRITISH COLUMBIA FOLLOWING COMMERCIAL WHALING
 http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1748-7692.2006.00076.x/full

 KILLER WHALES AND MARINE MAMMAL TRENDS IN THE NORTH PACIFIC―A RE-EXAMINATION OF EVIDENCE FOR SEQUENTIAL MEGAFAUNA COLLAPSE AND THE PREY-SWITCHING HYPOTHESIS.
 http://iwcoffice.org/_documents/sci_com/SC59docs/SC-59-ForInformation36.pdf

この事案からうかがい知れるのは、科学会にも鯨類に対する新しい知見を排除しようとする保守派が存在するということだ。エステス、スプリンガーらはフィールドワークを行い、ラッコやシャチの行動を直に観察してきた研究者だ。気候の変動や人類の漁業以外にも生態系を変動させている要因は広く知られるべきだろう。

作家に翻弄された国内の捕鯨問題

今、鯨類や捕鯨、水産に関連する書籍を集めている。解体新書「捕鯨論争」という書籍のためだ。

どこかで目にした文章や図、グラフ。「」を利用した皮肉的な強調。反・反捕鯨捕鯨サークルという言葉。レッテル貼りを批判した書籍とは到底思えない。

マスメディアで取り扱われた調査捕鯨に対する批判の発信元は環境保護団体やフリージャーナリストによるものだった。イルカ&クジラアクションネットワークグリーンピースジャパンと連動しており、このフリージャーナリストは元グリーンピースジャパンの捕鯨担当だった。

これらは長年にわたり、水産庁ならびに調査捕鯨に関連する団体、マスメディアを批判してきたが、自分たちの存在をどう考えているのか。捕鯨に批判的な文章を発信してきたのは朝日新聞とその元委員が設立したJANJANというインターネット新聞が主で、Japan Times や Guardian のような外国メディアも同様の情報を発信している。

私はもともと調査捕鯨には懐疑的だった。なぜ捕鯨モラトリアムにも関わらず、こんなにも鯨肉が手に入るのかが疑問だった。しかし、調べてみれば捕鯨はまだ続いていたし、調査捕鯨も止める理由が見つからなかった。逆に批判的な意見に対し疑問を呈するようになった。このような主張をする者らのほとんどが生物を直接扱う職にはなく、物書き、作家だったからだ。

国内のNGOが成果を出せない理由は、個人主義の人間が運営しているからだ。自己主張が強いだけで他との協調性を欠いている。政府や水産庁が不正を働いているなどと喧伝する前に自分らの組織を見直すべきだろう。オンブズマン(行政機関を外部から調査、監視する立場)の必要性がこの書籍では叫ばれているが、監視が必要となるのは強硬な手段をとり続けるNGOの方だろう。

「真実が靴を履く間に、嘘は地球を半周する」ようであるから、これから内容を吟味させてもらう。どこかの団体と違い、私のブログはコメントを許可している。
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D'z(ダイズ、ディズとでも)
危険なこと、汚れることが大好き
サメ野朗。

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