新小銃と新拳銃の懸念について - 20式5.56mm小銃 と SFP9
防衛省が陸上自衛隊に配備する新型小銃と新型拳銃を一般公開した。
これにより詳細が明らかとなったため、懸念事項を挙げておきたい。
20式5.56mm小銃の懸念
銃床はオーバースペック
銃床はチークパッドの調整も可能であるが、私個人は不要と考える。短縮されたカービンライフルでマークスマンライフルのような精密性は不要であり、照準器側の位置を調整すべきだ。
そもそもガスマスク等を装面した際には銃床に頭部を依託できない。複雑な銃床を新造、標準化するよりも、簡素なものを標準化し、特殊用途の銃床を少数配備、交換できるようにしても良かったであろう。
射手や装備に合わせ銃床を調整できることは良い。ただ、チルト側の調整まで可能になってしまうと、射撃数の少ない陸上自衛隊において個々に最適な位置を見出すことが難しくなってしまうのではないか。
既存規格の被筒部
被筒部のレールはMAGPUL の M-Lok 規格のようである。
しかし、私はこの基部の形状を好きではない。被筒部を八角形にすれば保持しやすく、八面にレールを装着できたはずだ。
20式では被筒部の四面しか使用できず微妙な位置調整にはアタッチメントが必要だ。
グリポッドは必要か
公開時には二脚付握把を装着していたが、遮蔽物を利用した射撃の際に障害となる、従来の二脚より安定性に乏しいなどの問題がある。AR系の銃のようにマグウェルが拡張されているため、弾倉基部を握って対応することが多くなるだろう。
個人的には握把は不要と考える。
槓桿の位置に懸念
槓桿が左側面にあるが、私はこの構造を好きではない。初弾の装填を銃線を維持しつつ素早くできるという利点はあるが、部品数が増し、障害時にボルトの操作が難しくなる。
カラシニコフや64式、89式はボルトとハンドル部が一体化しており、直接操作することができる。薬室を視認しながら操作できる構造は安全面で優位だ。ハンドル部が射撃時に可動することは危険でもあるが、排莢口のクリアランスを保つ癖ができるので良い。
20式の槓桿はSCAR のように連動するようだが、銃左側面にも注意を払わねばならなくなる。これは危険な構造だ。
ボルトキャッチの操作性
20式には左右両面でボルトキャッチを操作できるようである。この構造は珍しく、操作性は良さそうである。89式は左面にボルトキャッチがあるが、操作部が小さいうえ、ボルトの力が強いため固定も解放も難しい。利き手とは反対の手でリリースをしなくとも良い20式の構造は非常に興味深い。
PMAG の使用を許可するのか
弾倉は MAGPUL の PMAG であった。
PMAG は米軍内でも使用の可否について揉めていたようだが、PMAG の使用を許すのであれば厳重な管理が必要になるのではないか。
PMAG は独特な形状であった89式のものと違い、米軍や民間で多量に流通してしまっているため、それらと混じると判別が不能になってしまう。
例えば 弾倉の紛失を隊員が米軍の放出品で自弁した などというあってはならない事案が起こりえることは容易に想定できるのだ。
アドオン式擲弾発射器は必要か
今回の報道ではアドオン式のグレーネードランチャーも展示されていた。なぜ Pietro Beretta の GLX160 なのか、この種の発射器を敬遠してきた防衛省がこれを展示した意図は不明だ。
銃一体型の擲弾発射器は歩兵の火力を大幅に増すように思われるが、使用者の射撃精度と体力を著しく奪う。また、使用者が死傷、武器を紛失した場合40㎜擲弾の利用が不能となる。
運用にあたって現場の人員に負荷がかかるようであればアドオン式の発射器は不要であると考える。
銃剣は必要か
20式は着剣可能である。
近年、諸外国の軍隊が銃剣戦闘訓練を削減しているため、銃剣不要を唱える識者がいるが、私は銃剣を必要だと考える。
閉所などでは味方を殺傷する危険があるが、着剣が必要になってくるのは制圧後であろう。
銃弾の破壊力を認識していない者は銃を恐れずに抵抗してくる可能性がある。興奮状態にある者、薬物使用者らは特にだ。鋭利なものはそういった連中にも心理的なプレッシャーを与えられるうえ、殺害してはならない状況下では銃弾よりも銃剣で人体に損傷を与えたほうがまだ延命できる可能性があるからだ。
20式用銃剣はワイヤーカッター機能をなくしているということだが、当然であろう。鉄線鋏カバーなどというゴミを精鋭の人員に管理させるべきではないし、私ならばケーブルカッターを持っていく。
SFP9 について
SFP9 については以前から懸念していたが、マガジンリリースが思ったほど使い勝手のいいものではなかったようだ。
公開された動画では引き金から人差し指を外し、その指でレバーを押下、弾倉を外している。
私はレプリカで握把を最小に設定して試行錯誤を繰り返したが、握りを緩めずに弾倉を外すことはできなかった。
次世代までの繋ぎの銃
今回の新小銃も新拳銃も戦局を一変させるようなものではない。米陸軍は次世代分隊火器NGSW(Next Generation Squad Weapon) のトライアルを行っており、弾薬の一新を図ろうとしている。
人民解放軍は5.56mm NATO よりもわずかに優位性がある 5.8mm DBP の改良を継続、新小銃 QBZ-191 を配備し始め、20式やSFP9 だけでは抑止力として極めて弱い。
操作性だけに限って言えば89式や64式の被筒部と銃床の改修でも事足りたように思う。
弾丸が変える現代の戦い方(二見龍、照井資規 著) という著書に新小銃について言及されており、共感できる部分があった。照井氏は 自衛隊を近代化するには銃剣を廃止し、7.62mm ブルパップ小銃、7.62mm軽機銃、7.62mmリモートウェポンシステム対応車載機銃を制式化、5.56mm を廃止すること と主張している。
私は銃剣と5.56mm 廃止には反対だが、7.62mm の拡充、ブルパップ小銃の限定的使用をしても良いと考えている。
(ブルパップであっても銃剣戦闘は可能であり、照井氏のいう有望な7.62mm のブルパップ小銃はイスラエルのTABOR 7 ぐらいしかなく、氏の主張はリスクが高すぎる。)
正規戦の撃ち合いではやはり火力が必要であるが、山中や市街地に潜伏したゲリラコマンドの掃討には5.56mm が必要だ。
89式に代わる次世代の小銃まで20式は繋ぎとしかならないだろう。
次世代の小銃は低コストでありながら敵方よりも優位性を示し、使用者の経験をフィードバックした操作性の良い銃となることを願う。
これにより詳細が明らかとなったため、懸念事項を挙げておきたい。
20式5.56mm小銃の懸念
銃床はオーバースペック
銃床はチークパッドの調整も可能であるが、私個人は不要と考える。短縮されたカービンライフルでマークスマンライフルのような精密性は不要であり、照準器側の位置を調整すべきだ。
そもそもガスマスク等を装面した際には銃床に頭部を依託できない。複雑な銃床を新造、標準化するよりも、簡素なものを標準化し、特殊用途の銃床を少数配備、交換できるようにしても良かったであろう。
射手や装備に合わせ銃床を調整できることは良い。ただ、チルト側の調整まで可能になってしまうと、射撃数の少ない陸上自衛隊において個々に最適な位置を見出すことが難しくなってしまうのではないか。
既存規格の被筒部
被筒部のレールはMAGPUL の M-Lok 規格のようである。
しかし、私はこの基部の形状を好きではない。被筒部を八角形にすれば保持しやすく、八面にレールを装着できたはずだ。
20式では被筒部の四面しか使用できず微妙な位置調整にはアタッチメントが必要だ。
グリポッドは必要か
公開時には二脚付握把を装着していたが、遮蔽物を利用した射撃の際に障害となる、従来の二脚より安定性に乏しいなどの問題がある。AR系の銃のようにマグウェルが拡張されているため、弾倉基部を握って対応することが多くなるだろう。
個人的には握把は不要と考える。
槓桿の位置に懸念
槓桿が左側面にあるが、私はこの構造を好きではない。初弾の装填を銃線を維持しつつ素早くできるという利点はあるが、部品数が増し、障害時にボルトの操作が難しくなる。
カラシニコフや64式、89式はボルトとハンドル部が一体化しており、直接操作することができる。薬室を視認しながら操作できる構造は安全面で優位だ。ハンドル部が射撃時に可動することは危険でもあるが、排莢口のクリアランスを保つ癖ができるので良い。
20式の槓桿はSCAR のように連動するようだが、銃左側面にも注意を払わねばならなくなる。これは危険な構造だ。
ボルトキャッチの操作性
20式には左右両面でボルトキャッチを操作できるようである。この構造は珍しく、操作性は良さそうである。89式は左面にボルトキャッチがあるが、操作部が小さいうえ、ボルトの力が強いため固定も解放も難しい。利き手とは反対の手でリリースをしなくとも良い20式の構造は非常に興味深い。
PMAG の使用を許可するのか
弾倉は MAGPUL の PMAG であった。
PMAG は米軍内でも使用の可否について揉めていたようだが、PMAG の使用を許すのであれば厳重な管理が必要になるのではないか。
PMAG は独特な形状であった89式のものと違い、米軍や民間で多量に流通してしまっているため、それらと混じると判別が不能になってしまう。
例えば 弾倉の紛失を隊員が米軍の放出品で自弁した などというあってはならない事案が起こりえることは容易に想定できるのだ。
アドオン式擲弾発射器は必要か
今回の報道ではアドオン式のグレーネードランチャーも展示されていた。なぜ Pietro Beretta の GLX160 なのか、この種の発射器を敬遠してきた防衛省がこれを展示した意図は不明だ。
銃一体型の擲弾発射器は歩兵の火力を大幅に増すように思われるが、使用者の射撃精度と体力を著しく奪う。また、使用者が死傷、武器を紛失した場合40㎜擲弾の利用が不能となる。
運用にあたって現場の人員に負荷がかかるようであればアドオン式の発射器は不要であると考える。
銃剣は必要か
20式は着剣可能である。
近年、諸外国の軍隊が銃剣戦闘訓練を削減しているため、銃剣不要を唱える識者がいるが、私は銃剣を必要だと考える。
閉所などでは味方を殺傷する危険があるが、着剣が必要になってくるのは制圧後であろう。
銃弾の破壊力を認識していない者は銃を恐れずに抵抗してくる可能性がある。興奮状態にある者、薬物使用者らは特にだ。鋭利なものはそういった連中にも心理的なプレッシャーを与えられるうえ、殺害してはならない状況下では銃弾よりも銃剣で人体に損傷を与えたほうがまだ延命できる可能性があるからだ。
20式用銃剣はワイヤーカッター機能をなくしているということだが、当然であろう。鉄線鋏カバーなどというゴミを精鋭の人員に管理させるべきではないし、私ならばケーブルカッターを持っていく。
SFP9 について
SFP9 については以前から懸念していたが、マガジンリリースが思ったほど使い勝手のいいものではなかったようだ。
公開された動画では引き金から人差し指を外し、その指でレバーを押下、弾倉を外している。
私はレプリカで握把を最小に設定して試行錯誤を繰り返したが、握りを緩めずに弾倉を外すことはできなかった。
次世代までの繋ぎの銃
今回の新小銃も新拳銃も戦局を一変させるようなものではない。米陸軍は次世代分隊火器NGSW(Next Generation Squad Weapon) のトライアルを行っており、弾薬の一新を図ろうとしている。
人民解放軍は5.56mm NATO よりもわずかに優位性がある 5.8mm DBP の改良を継続、新小銃 QBZ-191 を配備し始め、20式やSFP9 だけでは抑止力として極めて弱い。
操作性だけに限って言えば89式や64式の被筒部と銃床の改修でも事足りたように思う。
弾丸が変える現代の戦い方(二見龍、照井資規 著) という著書に新小銃について言及されており、共感できる部分があった。照井氏は 自衛隊を近代化するには銃剣を廃止し、7.62mm ブルパップ小銃、7.62mm軽機銃、7.62mmリモートウェポンシステム対応車載機銃を制式化、5.56mm を廃止すること と主張している。
私は銃剣と5.56mm 廃止には反対だが、7.62mm の拡充、ブルパップ小銃の限定的使用をしても良いと考えている。
(ブルパップであっても銃剣戦闘は可能であり、照井氏のいう有望な7.62mm のブルパップ小銃はイスラエルのTABOR 7 ぐらいしかなく、氏の主張はリスクが高すぎる。)
正規戦の撃ち合いではやはり火力が必要であるが、山中や市街地に潜伏したゲリラコマンドの掃討には5.56mm が必要だ。
89式に代わる次世代の小銃まで20式は繋ぎとしかならないだろう。
次世代の小銃は低コストでありながら敵方よりも優位性を示し、使用者の経験をフィードバックした操作性の良い銃となることを願う。
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