クジラと地震を結びつけるな - 非常時だからこそ

「クジラ 地震」などのキーワード検索でこのブログにたどり着いた人にお願いがある。鯨類の座礁は地震の前兆や予兆だという文章をネット上に投稿しないでいただきたい。このような文章は今後集団座礁の報道があるたび、人々に無用な不安を与えかねない。鯨類の集団座礁はしばしば世界各地で起こっており、地震との関連は認められない。

ひとつ、例を挙げておこう。以下に1998年に出版されたクジラ・イルカ大百科(水口博也 262,263項)に掲載されている文章を引用する。



クジラの集団座礁
アラン・ベーカー Alan N. Baker

なぜ座礁するのか
 集団座礁(マス・ストランディング)とは、1度に3頭ないしそれ以上のクジラが海岸に座礁することをいう。じっさいにポッド、あるいは群れ全体が座礁することが多い。
 ふつうは外洋性の種に多く、沿岸近くに生息するもの(セミクジラやある種のイルカなど)は浅瀬で暮らすことに慣れているため、めったに座礁することはない。しかし、彼らでもときには潮流や波によって岸へ流されたり、引き潮どきに入り江に取り残されたりすることがある。
 集団座礁にはさまざまな原因が考えられるが、最初に座礁するのは、エコーロケーションに混乱をきたしたり、嵐に巻きこまれたり、あるいは病気や、出産がうまくいかなかった個体なのだろう。1頭あるいは数頭が座礁すると、彼らは社会的なつながりが強いために、群れ全体がいっしょに座礁してしまう結果になる。そのため、明らかに集団座礁する大部分の個体は健康だといっていい。
 いずれにしろ、集団座礁はふつう1頭が方向を見失って座礁することが引き金となる。そのとき、このクジラ(key whaleと呼ばれる)は、ほかのクジラが体を寄せて泳がざるをえなくなるような、何らかの声を発するのかもしれない。そして、こうした状況が、とりわけ傾斜がなだらかに続く浜や、潮の干満の差が激しい浅瀬で起こった場合、集まってきたクジラたちがいっせいに、引き潮になった浜に座礁することも起こりうる。あるいは、嵐のときであったなら、激しい波で浜にうちあげられることもあるだろう。

 (中略)

 座礁するのはもっぱらハクジラ類で、コビレゴンドウやヒレナガゴンドウ、オキゴンドウ、マッコウクジラといった種に多い。ニュージーランドでは225頭のオキゴンドウが集団座礁したことがある。また、シャチやハンドウイルカなど数種のイルカにも、ときおり集団座礁が見られる。

 (後略)


アラン・ベーカー◎30年にわたって南西太平洋および南極海で鯨類の生態の研究活動を行なう。ホンコンにあるオーシャンパークの、鯨類部門の科学アドヴァイザーをつとめる。ニュージーランド国立博物館のディレクターから、現在は同国の自然保護局の研究員。(引用終り)


アラン・ベーカーはニュージーランドの専門家だが、集団座礁と地震との関連についていっさい言及していない。

2005年ニュージーランド・フェアウェル・スピット
2005年12月20日、ニュージーランド南島フェアウェル・スピットのゴンドウクジラの集団座礁
http://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:Whales_on_beach,_Farewell_Split,_South_Island,_New_Zealand.JPG


日本で発信されている情報としては、以下の宮本拓海氏のページがわかりやすい。

いきもの通信
[今日の事件]クジラの多量座礁は天変地異の前兆なのか?

http://ikimonotuusin.com/doc/128.htm


今年はニュージーランドの地震と、東北地方太平洋沖地震の発生前にゴンドウクジラの集団座礁報道があったために「クジラが地震を予知していた」というようなデマが飛び交っている。今日は twitter のような SNS の普及でこのようなデマがあっというまに拡散されてしまう。今一度お願いする。

鯨類の座礁は地震の前兆や予兆だという文章を安易に投稿しないでいただきたい。このような文章は今後集団座礁の報道があるたび、人々に無用な不安を与えかねない。

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今後の研究課題として

社会的問題だけで科学的研究の可能性に蓋をするのは疑問があります。今回の大震災も被害の大きさ、地震から津波などの二次災害へ対応が早ければ助かった命があると思います。
また、地震予知の今までの研究にある程度の限界があるとされる現在ではいち早く地震を察知する研究は必要だと思います。鳩が方位磁針にた感覚を持っていることや、中国の大地震で地表の変化により強力な磁力発生『地震雲?』と呼ばれるものの存在も研究されています。今後地震研究に期待したいところではあります。

シーシェパードについては、織田信長の時代から白人の人種意識が強く、黒人(奴隷)を謙譲したなど宗教人であっても西洋人の差別意識は強く、牛肉を輸出する国を母体として活動することは今後の食糧難時の選択肢をなくすことになり危険であり、その動物の大きさや知能で優劣きめることは人種意識が根本的に秘めている表れと思います。宮崎県の口蹄疫で種牛を無くした農家はたとえか家畜であっても深い愛情が有ったことは皆さんもご存知かと思います。チベットの鳥葬は残酷な気もしますがその地域の環境(不毛な土地など)では必要なことと思います。

D'zさん

佐々木さんのところでも地震と鯨座礁を話題にしろというコメントがあったので無断で個々のリンクはりました。事後承諾ですみません。

正直、鯨座礁が地震の時も起きるとしても、それ以外のケースが多すぎて、予知方法としては、すぐれているとは思われません。むしろ混乱を拡大する可能性があるので、きちんとした研究結果を待って話す必要がある問題です。

Re: 今後の研究課題として

アーチャリアさん、はじめまして。

私はただのサラリーマンで、自らの体験からでしか物を考えられませんが動物の行動や自然現象はあてにならないと思っています。予知に限界があるのならば、震災後の対応を強化していく必要があるのではないでしょうか。

シーシェパードに関しては、もっと短絡的に考えて良いと思います。我の強い者らが、環境や動物の保護の名目を利用して自己顕示を行っているだけなのだと。食肉産業と結びついているのならば、奴らはもっと裕福なはずです。

鳥葬については初めて知りました。自然と思想とが融和しある意味では理想的なものですが、私たちの社会では受け入れづらいものですね。

Re: ednakano さん

いいえ、サラリーマンなんで説得力ないですw

それよりも、17日にタスマニアでゴンドウ30頭がストランディングしていますね。今度はタスマニアで地震が起こるんでしょうか?タスマニアやニュージーランドのストランディングは毎年のように報道されています。なぜゴンドウやマッコウのハクジラだけに集団座礁が多いのか、疑問に思う人は少ないようですね。

まあ専門家だってあてにはならんですし、事実頻繁に起こっていることを地震に結びつけるのは予知にはなっていないんです。

ちなみに私もサラリーマンですけど

まあ、これだけは鯨に聞いてみんとわからちゃね。

ednakano さん
タスマニアでは年にゴンドウやらマッコウやら数百頭も座礁して報道されているのに、地震との関連を信じる人はそういうことを調べようとはしないんですね。

越川隆文 さん
鯨に聞いてもわからちゃです。人間が客観的に判断してやるしかないと思います。

大量座礁の原因の一理由に地震との関係性を挙げているだけであって、確定情報だとは誰も述べていない
にもかかわらず、安易に「大地震発生か!?」と騒ぐものだから、さも起こりうるかのように語られていますが、あくまでも「関係性は不明」

しかし、そういった議論は必要だと思います
例えば、東北地震でも実際に大量座礁は起こった訳で、その原因と関係性の追求は価値あるものだと思います
安易な「投稿禁止」よりも、「正しい議論」の方が大切ではないでしょうか?


学生さん、はじめまして。
私はお願いをしています。

鯨類の座礁、漂着は世界各地で頻繁に起こっており、地震もまた規模に関わらず起きない年はありません。
議論をお望みでしたら是非させてください。
地震との関連性を追求するに値する要因を示してみてはもらえませんか。
私はゴンドウらハクジラの生態と餌生物との関連性を追求すべきだと考えています。
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Author:D'z
D'z(ダイズ、ディズとでも)
危険なこと、汚れることが大好き
サメ野朗。

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