中国、印にマイクロ波攻撃の嘘

中国がラダック地方のインド軍に対しマイクロ波攻撃を行ったという報道が一部でなされているが、信憑性が低い。
第一発信者が誇大発言をすることで著名な人物であり、その発言内容には具体性が認められない。


人民解放軍はラダックを奪還していない

2020年6月には同地方で中国人民解放軍とインド側の部隊と衝突が起きている。8月にもインド側が防衛行動を行っているが、中国側は被害を報じておらず、同地域を奪還したとも報じていない。仮に今回の報道のように中国側がラダック地方の一部を奪還したとなればインド側は10月中にも大々的な行動を起こしていたであろう。インド政府も今回の報道を否定しており、インド陸軍はこの報道を FAKE であると発信している。11月11日には双方が撤退することを協議した報道があり、今回の報道はこれに乗じた一個人の虚偽の発信であることが窺える。


現実を無視した主張

第一発信者である中国人民大学国際関係学院副院長 の 金燦栄 は 「山の頂上があたかも電子レンジのようになった。高地にいたインド軍がわずか15分で嘔吐し、立ち上がれないほどになって退却し、中国軍が高地の奪還に成功した」 などと主張しているが、この言説は現実味に欠けている。

まず、軍事的に山頂に部隊を配置するようなことはない。稜線上は敵方から発見されやすいためインド側が山頂に人員を配置していたとは考えられない。仮に双方が小火器の使用を禁じ対峙していたとすれば、インド側は中国側の不審な動きを察知し行動を起こしていたであろう。

次に、マイクロ波は直進性の電磁波であるため、山の下方から山頂側への照射は現実的ではない。山の起伏により遮蔽されるため、直進性の電磁波を照射するにはインド側が中国側に部隊を曝している状況が必須である。マイクロ波は水で大幅に減衰するため、地形や植生を透過して人体に影響がでるまで照射するとなると相当な出力が必要となる。そのような兵器が存在したとなれば、電子機器の破壊が可能なレベルであり、中国はとっくにラダック地方の覇権を握っていたであろう。

southpangon.jpg
google map より一部のページが中国側が奪取したとするパンゴン湖南部の地形。
人民解放軍が15分も山頂に向けマイクロ波を照射している間にインド側はそれを察知し南北に部隊を分け斜面を下り平地の人民解放軍兵を撲殺していたであろう。


報道機関は事実確認を行え

今回の報道は 中国人民大学国際関係学院副院長 の 金燦栄 の 微博(ウェイボー) への投稿動画が発信源であり、なぜこのような言説を拡散するかのように日本のメディアが報じるのか。海外のメディアはすでにこれについて否定的な内容を報じている。報道機関は マイクロ波攻撃 などというような言葉を強調するようなことなく、慎重な報道をなすべきだ。

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中国人民解放軍陸軍の新狙撃銃 - QBU-191精确射手步枪

10月、中国人民解放陸軍がチベットの部隊に QBU-191精确射手步枪 を配備したという報道があった。

QBU-191精密歩槍 はQBZ-191自動歩槍 と同一のプラットフォームのマークスマンライフルで、その性能については興味深いものがある。

有効射程 600~800m
使用弾薬 5.8×42mm
装弾数 10/30発
夜間視認距離 300m

従来の QBU-88 よりも有効射程が短くなっているが、銃身長の違いによるものと思われる。ブルパップである QBU-88 はその形状から10発弾倉を使用せざるをえないようだが、QBU-191 は30発弾倉の装填が可能である。これは米国海兵隊の M27IAR のように支援火器としての運用も可能な構造だ。

銃床は QBZ-191 同様伸縮が可能で、写真ではチークピースはない。QBZ-191 と同構造であれば銃床内部はスプリングが入っており従来の銃より反動が低減されているのではないか。

被筒部は八角柱型、ユニットレールの装着が可能なようである。

Wi-Fi 通信機能があるとの記述も見受けられるが、機能の詳細についてはわからない。


この手の小火器と相対した場合、5.56㎜NATO では対抗できなくなる可能性がある。ベルトリンク式の機銃の火力で制圧するか、7.62㎜NATO など射程を上回る銃で対抗することも想定しなければならなくなるだろう。


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