駿河湾産サクラエビ不漁 - 環境要因の解明必要

静岡新聞社がサクラエビの不漁について特集を多く出している。16日には興味深い記事があった。
山梨県早川町の採石業者が汚泥を不法投棄していたというものだ。

漁業者らの間では富士川の濁りが不漁に関連しているのではないかと指摘されてきたようだが、的外れなものではない。
サクラエビのような甲殻類は幼生期に汚濁の影響を受ける可能性がある。


プランクトンは粘土で死滅する

かつては生活排水による富栄養化でプランクトンが異常発生する赤潮が多く発生していた。赤潮は海域を無酸素状態にし、周辺の生物を窒息死させるため、養殖業界に深刻な被害をもたらす。
この防除に粘土を用いた方法がある。モンモリロナイトなど粘土鉱物を散布、プランクトンに摂取させることで沈殿させるのだ。
サクラエビはノウプリウス、エラフォカリス、アカントソーマ、とプランクトン生活を経て成体となるのだが、これらは汚濁の影響を非常に受けやすい状態にある。サクラエビの生態については不明なことが多いが、富士川河口の汚濁がサクラエビの産卵場所である浅瀬の幼生を死滅させている可能性は考えられないだろうか。


多角的な環境要因の解明が必要

上記の要因は不漁の仮説の一つでしかない。資源学的な考えの他、環境要因の解明が必要であろう。
海流、海水温、競合生物の分布など。近年はオリンピック関連事業、リニア開発、水害の影響により河川の土木工事も進んだ。
乱獲のみを原因と考えず、サクラエビの生態の究明はもちろん、環境要因の解明も必要となるだろう。


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漁業改革に必要な市場改革 - NHK 週刊ニュース深読みを視聴し

9月2日、NHK の番組が漁業関係であったことから視聴した。

 NHK総合
 週刊ニュース深読み
 ギョギョギョッ!! 日本の食卓から魚が消える?
 http://www.nhk.or.jp/fukayomi/maru/2017/170902.html

この番組は SNS 連動で視聴者の意見を募集しており、イラストや模型などでそれらが表現されていた。これまでのように漁業のみを批判するのではなく、消費者市場のあり方についても言及していたことはおおいに評価できた。

ただ、漁業規制改革を主張する勝川俊雄 東京海洋大学准教授の出演には違和感があった。氏のこれまでの著書やメディアでの発言は水産庁や漁業者を強く否定してきており、同番組でのトーンダウンした発言には疑問を覚えた。


漁業改革に必要なのは市場改革

水産資源を危惧するのであれば、同番組が言及した消費者の意識の変更は漁業規制よりも有効であろう。消費者が価格安を求め小売り側が値上げをせず一定量を求めればその負担は漁業者側にかかる。特に日本の市場は季節物や縁起物を求める傾向が強く、魚介類の資源量とは無関係な需要が顕著であることが問題である。

ウナギはその一例である。夏季になると全国の大手小売りがキャンペーンを行うことが問題である。コンビニエンスストアの普及もあってその競争は苛烈化しており、販売ノルマを従業員に課しているケースが常態化している。養殖事業者は需要に応えようとすれば資源にも負荷がかかる。資源保護の前に、現在のような販売形態をとっている大手小売りの市場を変化させることが急務であると私は考える。


番組の後半では新潟県のアマエビ(アカエビ)を例に漁獲割り当てや漁期の変更について紹介していたが、これは他の魚介類に通用するものではない。アマエビの漁場は水深100m以上で環境の変化が表層ほどではないために成しえることだからだ。

勝川らは未成魚の漁獲を批判するが、これも日本の市場ゆえにやむを得ない事情が存在する。水産加工品に向いているのは価格の高い成魚ではなく未成魚であるためである。勝川らは繁殖可能な成魚に成長するまで漁獲を停止することを主張してきているが、卸値が数百万のクロマグロの成魚をツナ缶にしたり、イワシの成魚をシラスとして販売する事業者はない。カツオ節も油がのっていない個体の方が良質となり、西日本では脂質の少ない食用魚種が好まれる傾向がある。未成魚の漁獲は不必要な乱獲ではないのだ。未成魚には付加価値があると市場に認めさせ、価格を上げていく必要がある。

諸外国の海洋への進出も要因である。近年のインパクト要因は中国の発展である。中国では北京オリンピックまで発展が続き、海洋資源の利用も劇的に拡大した。
諸外国は日本と違い、燃料も人件費も安く漁獲量を増してきている。一方日本はマンパワーも不足し、燃料価格も高騰してきており、これらは漁獲量の減少の要因となっている。漁獲量の減少が資源量の減少なのか、漁獲努力量の減少なのかは精査が必要なところである。


勝川氏は番組の最後に水産資源を銀行の預金に例え、利息のみを利用するといった発言をしていたが、水産資源量の変動は銀行預金とは違う。環境要因によって大きく変動する株式市場の値動きの方が近く、生物は銀行預金の利息ような堅実な増加をしない。真に水産資源を専門とする方々は信頼性の低いメディアへは出演を敬遠されているということを番組制作者にはご理解いただきたい。

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D'z(ダイズ、ディズとでも)
危険なこと、汚れることが大好き
サメ野朗。

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